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『福井『ジェンダー図書排除」究明原告団および有志」の代表・上野千鶴子さんの「連載 女たちの未来 明日へのメッセージ 闘って得たものは闘って守り抜く」を紹介します。

とっても元気の出るメッセージです。
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  女たちの未来  
明日へのメッセージ         上野千鶴子さん発
       闘って得たものは闘って守り抜く
                
 日本のフェミニズムは行政主導型フェミニズムだ、という人がいる。とんでもない。歴史を歪曲してはならない。
 1985年に国連女性差別撤廃条約の批准を前に、滑り込みで成立した男女雇用機会均等法は、関係者にとっては少しも新しくなかった。結婚退職の禁止も、若年定年制の廃止も、それ以前に女性労働者が法廷で闘って勝ち取っていた。大卒女性の採用はそれ以前から始まっていたし、総合職扱いの女性幹部要員も一部の企業ではすでに生まれていた。職場の状況が変わったとしたら、それは法律のせいではない。それ以前に女性が変化していたからだ。法律の内容の多くは、すでに起きた変化を追認するものだった。均等法はそれに、女性がのぞまなかったものを付け加えた。保護の撤廃だ。保護抜き平等で、働けるだけ働いてもらう・・・ネオリベと男女共同参画フェミニズムの結託は、この頃からすでに始まっていたが、これでは少子化が進むのも無理はない。
 80年代には女性センター建設ラッシュと啓発事業ブームが起きたが、それだってすでに民間が先行していた動きに追随したものにほかならない。ハコモノ行政に利用したのは、首長たち。女性は大理石のバブリーな建物をのぞんだわけではなかった。草の根の女性団体が集会場所をつくりたいと、1円募金で建てた大阪市の婦人会館のように、もとはといえばローカルなニーズから始まったものだ。ようやく財団ができ、プロパーの職員が誕生し、女性運動の担い手の中から相談事業の相談員や専門的な職員が次々に生まれていったが、それというのも行政の側にノウハウも情報もなく、民間の力を借りなければならなかったからだ。社会教育事業ももとはといえば、手弁当で集まった民間のサークルから始まった。そしてそのなかから、自分の生活実感を理論化しようと女性学の担い手たちが育っていった。こういう水面下の動きが目に入らない人々は、法と行政の動きだけを見て、日本のフェミニズムを「行政主導型」と呼ぶ。
 今どきの若い女たちは、あたりまえのように大学へ進学し、卒業すれば企業に就職することを選択肢のひとつに入れ、セクハラに遭えば怒る。彼女たちがあたりまえだと思っている権利は、ほんの4半世紀前にはあたりまえではなかった。どれもこれも、年長の女たちが闘って獲得してきたものだ。恩に着せようというわけではない。
 闘って獲得したものでなく、与えられた権利はたやすく奪われる。闘って獲得した権利ですら、闘って守りつづけなければ、足元を掘り崩される。女の元気を喜ぶ人たちばかりではない。「女は黙っていろ」、「おとなしく台所にひっこんでいろ」、「生意気だ、でしゃばるな」という声は、潜在的にはいたるところにある。グローバリゼーションとネオリベのもたらした危機のもとで、保守派はすでに余裕を失っている。そして規格にはずれた女をターゲットにする反動の戦略は、昔も今もホモソーシャルな「男同士の連帯」をつくりだすには、いちばん安直だが有効な手段だ。バージニア・ウルフはナショナリズムを「強制された同胞愛」と呼んだ。「女ではない」ことだけを男性的主体化の核に置く脆弱なアイデンティティの持ち主たちが、「ジェンダーフリー」バッシングというミソジニーを、「よっ、ご同輩」と男同士の「同胞愛fraternity」のために利用するのはあまりにみえすいた構図だ。
 歴史には「一歩前進二歩後退」もあることを、過去の教訓は教えてくれる。未来は明るいばかりではない。というより、「明るい未来」はだまっていてもやってこない。ある朝起きてみたら、こんなはずではなかった・・・と思わないですむために、今、果たさなければならない責務がある。
『女性情報』2006年10月号より
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「ある朝起きてみたら、こんなはずではなかった・・・と思わないですむために」
おごらず、あせらず、あきらめず、
「いま・ここ」で、わたしにできることをやっていきたい。
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「上野千鶴子さん講師拒否事件」の続報です。

東京都の「人権意識を考える市民集会」実行委員会あてに、
国分寺市教育委員会から回答が届きましたので紹介します。
「人権意識を考える市民集会実行委員会」の公開質問状については、
以下の記事をご覧ください。
「上野千鶴子さん講師拒否事件」の続報/国分寺市の関連(2.16記事)


                       国教教生発第48号
                       平成18年3月2日

          東京都の人権意識を考える市民集会
                   実行委員会 殿
                       国分寺市教育委員会教育
                       生涯学習推進課長 熊谷 淳

              公開質問状について(回答)

 平成18年2月9日付,国教教庶収第532号文書,市長,教育長宛の公開質問状につい
て,下記の通り回答します。
                    記

1 要綱に沿って作成しました。

2 国分寺市教育委員会は,東京都教育委員会と実施計画書の内容について協議しま
したが,東京都教育委員会の意向からモデル事業の再委託を受けることは困難と判断
し,本事業を実施しないこととしました。

3 上記2で述べたとおり,実施計画書の内容についての協議であります。また,準
備会と協議が尽くせなかったことについては,遺憾に思います。

4 国分寺市教育委員会は,市民の知る権利,並びに人権を今後も尊重してまいりま
す。

詳細は「東京都に抗議する!」から


ところで、3月17日に、沖縄県金武町の
キャンプハンセン米軍基地の入会権(軍用地料)を
女性には認めないという女性差別の会則(慣習)をめぐって、
当事者女性26人が「憲法14条違反」として提訴していた、
注目の「杣山(そまやま)訴訟」の最高裁判決がでました。

わたしは一昨年、沖縄県女性センター「てぃるる」に招かれた時、
「人権を考えるウナイの会」の原告代表の仲間美智子さんにお会いして、
直接お話をきいたので、この訴訟には注目していました。

一審は「原告勝訴」、二審の福岡高裁は「逆転敗訴」でした。
最高裁で弁論が開かれると関係者から聞いていましたので、
なんらかの形で高裁判決が見直される、と思っていました。

最高裁判決は「原判決を一部破棄差し戻し、一部棄却」

一部審理差し戻し 金武区「杣山訴訟」(3.17琉球新報)

以下に「判決文」を紹介します。

判例 平成18年03月17日 第二小法廷判決 平成16年(受)第1968号 地位確認等請求事件
要旨:
 1 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分と民法90条
2 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入
会権者の資格を認めないとする部分と民法90条

内容:  件名 地位確認等請求事件 (最高裁判所 平成16年(受)第1968号 平成18年03月17日 第二小法廷判決 一部破棄差戻し,一部棄却)
 原審 福岡高等裁判所那覇支部 (平成16年(ネ)第16号)

主    文
1 原判決のうち上告人X1及び同X2に関する部分を破棄し,同部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
2 その余の上告人らの上告を棄却する。
3 前項に関する上告費用は,前項記載の上告人らの負担とする。
         
理    由
 上告代理人宮國英男ほかの上告受理申立て理由第4の2及び同3について
 1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 沖縄県のA村(現在のA町及びB村)A部落(現在のA区)の住民らは,古来,「杣山」と呼称される林野(以下「本件入会地」という。)に入って薪を採取したり,材木を伐採するなどしていた。
 本件入会地は,明治32年公布の沖縄県土地整理法によりいったん官有地とされたが,明治39年,当時のA部落の住民(以下「A部落民」という。)らに対し,30年間の年賦償還で払い下げられた(以下,この払下げを「本件払下げ」という。)。本件払下げに係る代金は,A部落の村頭(区長)が,昭和8年まで正規のA部落民である各戸主から賦課徴収して支払った。その後,本件入会地の一部は昭和12年ころにA村の公有財産(昭和57年以降はA町の公有財産)に編入され,残りの土地は部落代表者の個人名で登記された(以下,本件入会地のうち公有財産とされた部分を「公有地部分」といい,部落代表者の個人名で登記された部分を「部落有地」という。)。
 (2) 入会集団であるA部落(以下,「A部落」とは入会集団としてのA部落をいい,「A部落民」とは入会集団としてのA部落の構成員をいう。)は,本件払下げ後,A部落の旧来の慣習及び規則に基づいて本件入会地の管理を行い,昭和12年ころ以降,公有地部分については,A村と締結した協定等に基づいて管理を行ってきた。
 そして,明治40年から昭和20年までの間にA部落の地区外から地区内に移住してきた者については,各戸につき木草賃として毎年50銭をA区事務所に納入することにより本件入会地の木草の採取が認められ,また,各戸につき20円を納付するなどすればA部落民の資格を取得することができた。
 (3) 昭和31年9月16日,本件入会地の入会権者から成る団体としてA共有権者会(昭和61年に名称をA入会権者会に変更)が設立され,以後,本件入会地のうち部落有地については,同団体の名で管理が行われてきた。また,公有地部分については,昭和57年7月12日,「旧慣によるA町公有財産の管理等に関する条例」(昭和57年A町条例第1号)の制定に対応してA部落民会(被上告人の前身。以下「A部落民会」という。)が設立され,同条例に規制される形で,A部落民会の名で管理が行われてきた。しかし,部落有地を管理するA入会権者会と公有地部分を管理するA部落民会とは実態が同一であったことから,平成12年5月19日,両会が合併して被上告人が設立された。
 (4) 本件入会地の入会権の得喪についてのA部落における慣習(以下「本件慣習」という。)は,次のようなものであり,被上告人は,本件慣習に従って入会権者とされる者を会員としている。なお,A共有権者会,A入会権者会及び被上告人の会則は,おおむね本件慣習に基づいて定められていたが,A部落民会の会則は,本件慣習とは異なり,会員資格を男子孫に限定していなかった。
 ア 本件払下げを受けた当時,A部落民として世帯を構成していた一家の代表者は,いずれも本件入会地につき入会権を有する。
 イ 明治40年から昭和20年3月までの間にA部落の地区外から地区内に移住してきた一家の代表者であって,一定の金員を納めるなどしてA部落民の資格を認められた者も,本件入会地につき入会権を有する。
 ウ 入会権者たる資格は,一家(1世帯)につき代表者1名のみに認められる。そして,一家の代表者として認められるためには,単に住民票に世帯主として記載されているだけでは足りず,現実にも独立した世帯を構えて生計を維持していることを要する。
 エ 入会権者の死亡や家督相続によって一家の代表者が交替した場合には,新たな代表者が後継者として入会権者の資格を承継する。入会権者の資格を承継する代表者は,原則として男子孫に限られるが,男子孫の後継者がいない場合や幼少の場合には,例外的に旧代表者の妻が資格を取得することもあり(ただし,幼少の男子孫が成長して入会権者の資格を取得すれば,妻は資格を失う。),また,旧代表者が死亡し男子孫がない場合には,女子孫が入会権者の資格を承継することも認められるが,入会権者として認められるのは当該女子孫1代限りである。
 オ 男子孫が分家し,A区内に独立の世帯を構えるに至った場合は,その世帯主からの届出により,入会権者の資格を取得する。独身の女子孫については,50歳を超えて独立した生計を営み,A区内に居住しているなど一定の要件を満たす場合に限り,特例として,1代限りで入会権者の資格を認められる。なお,A部落民以外の男性と婚姻した女子孫は,離婚して旧姓に復しない限り,配偶者が死亡するなどしてA区内で独立の世帯を構えるに至ったとしても,入会権者の資格を取得することはできない。
 (5) 被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体の中には,近年会則を変更するなどして,世帯主である限り,男子孫と女子孫とで差異を設けない取扱いをするようになった団体もある。
 (6) 被上告人においては,本件慣習に基づいた会則(Y会則)を有しており,新たに入会する者については,届出又は申出に基づき役員会の議を経ることを要することとし,入会資格の審査が行われてきた。そして,入会の申請者には戸籍謄本,住民票等の提出を義務づけ,これに基づいて審査を行うが,単に書類上世帯主として記載されているだけでは足りず,現実にも独立して生計を営んでいることが必要とされるため,審査に当たっては必要に応じて生活実態の調査等も行われてきた。
 (7) 上告人ら(なお,上告人X3は,当審係属中の平成16年11月28日死亡し,その夫と子3名がその地位を承継した。以下においては,亡X3を含めて「上告人ら」ということがある。)は,いずれも,本件払下げ当時のA部落民であって本件入会地について入会権を有していた者の女子孫であり,遅くとも平成4年以降現在に至るまでA区内に住所を有し居住している。上告人X1及び同X2(以下「上告人X1ら」という。)は,いずれも,A部落民以外の男性と婚姻したが,その後夫が死亡したことにより,現在は戸籍筆頭者として記載され,世帯主として独立の生計を構えるに至っている。上告人X4らその余の上告人(以下「上告人X4ら」という。)は,いずれも,戸籍筆頭者ではない。
 (8) 本件入会地は,第2次世界大戦後,国が賃借した上でアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)の用に供するために使用され,その賃料は,被上告人により収受・管理され,その一部が入会権者である被上告人の構成員らに対し,補償金として分配されている。
 2 本件は,上告人らが,被上告人に対し,本件慣習(本件慣習に基づいて定められた被上告人の会則を含む。以下同じ。)のうち入会権者の資格を世帯主及び男子孫に限り,A部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り資格を認めないとする部分が公序良俗に反して無効であるなどと主張して,上告人ら(ただし,上告人亡X3関係を除く。)が被上告人の正会員であることの確認を求めるとともに,平成4年度から平成14年度までの補償金として各306万円の支払(ただし,上告人亡X3訴訟承継人X5については153万円の,同X6,同X7及び同X8については各51万円の,上告人X9については,平成13年度及び平成14年度の補償金として120万円の各支払)を求めるものである。
 3 原審は,前記事実関係の下で,次のとおり判断し,上告人らの請求をいずれも棄却した。
 (1) 被上告人は,本件入会地の入会権者らを構成員とする入会団体であるから,上告人らが被上告人の構成員の地位を有するというためには,上告人らが本件入会地の入会権を取得したことが認められる必要がある。そして,入会権については各地方の慣習に従うとされているから,上告人らが入会団体である被上告人の構成員の地位を有するというためには,上告人らが当該地方(A部落)の慣習,すなわち本件慣習に基づいて本件入会地の入会権者の資格を取得したことが認められなければならない。なお,本件入会地は,第2次世界大戦後は駐留軍の用に供するために使用されていて,現在は個々の入会権者が直接入会地に立ち入ってその産物を収得するといった形態での利用が行われているわけではないけれども,入会権に基づく入会地の利用形態には様々なものがあり,入会団体が第三者との間で入会地について賃貸借契約等を締結してその対価を徴収したとしても,その収入は入会権者の総有に帰属するのであって,入会権が消滅するわけでも,入会権の内容や入会団体としての性質が変容するものでもない。
 (2) 本件慣習のうち,本件入会地の入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分(以下,この資格要件を「世帯主要件」という。)は,入会権の本質に合致するものであって,公序良俗に反して無効とはいえない。
 上告人X4らは,家の代表者としての世帯主であることの主張立証がなく,本件入会地の入会権を取得したものとはいえない。
 (3) 本件慣習のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限り,A部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分(以下,この資格要件を「男子孫要件」という。)も,それなりの合理性があり,公序良俗に反して無効とはいえない。もっとも,男子孫と女子孫とで取扱いに差異を設ける必要性ないし合理性は特に見当たらないし,被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体の中には,近年会則を変更するなどして,世帯主である限り,男子孫と女子孫とで差異を設けない取扱いをするようになった団体もあることが認められる。しかし,入会権は,過去の長年月にわたって形成された地方の慣習に根ざした権利であるから,そのような慣習がその内容を徐々に変化させつつもなお存続しているときは,これを最大限尊重すべきであって,その慣習に必要性ないし合理性が見当たらないということから直ちに公序良俗に反して無効ということはできない。そして,入会権が家の代表ないし世帯主としての部落民に帰属する権利であって,当該入会権者からその後継者に承継されてきたという歴史的沿革を有すること,歴史的社会的にみて,家の代表ないし跡取りと目されてきたのは多くの場合男子,特に長男であって,現代においても,長男が生存している場合に二男以下又は女子が後継者となったり,婚姻等により独立の世帯を構えた場合に女子が家の代表ないし世帯主となるのは比較的まれな事態であることは公知の事実といえること,被上告人以外の入会団体の中にも会員資格を原則として男子孫に限定する取扱いをしているところが少なからず存在することなどに照らせば,家の代表ないし世帯主として入会権者の資格要件を定めるに際し男子と女子とで同一の取扱いをすべきことが現代社会における公序を形成しているとまでは認められない。これに加え,男子と女子とで入会権者の資格が認められる要件に差異があることにより1世帯の内部において男子と女子の間で生じ得る不平等については,相続の際の遺産分割協議その他の場面で財産的調整を図ることも可能であることをも併せ考慮すれば,本件慣習のうち男子孫要件が公序良俗に違反するとまで認めることはできない。
 そうすると,上告人X1らは,A部落民以外の男性と婚姻した後に配偶者の死亡により世帯主として独立の生計を構えるに至ったものであるから,本件入会地の入会権を取得したとはいえない。
 4 しかしながら,原審の上記(1),(2)の判断は是認することができるが,(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 前記事実関係によれば,被上告人は,本件入会地の入会権者で組織され,本件入会地の管理・処分を行うこと等を目的とする入会団体(権利能力なき社団)であると認められる。また,本件入会地は,戦後,国が賃借した上で駐留軍の用に供するために使用されているが,その賃料は,入会団体である被上告人により管理されているというのであるから,本件入会地について,いまだ入会権が消滅したものともその性質を変容したものともいうことはできない。そうすると,上告人らは,被上告人の会員の地位を有するというためには,本件入会地について入会権者の地位を有すること,すなわち,本件慣習に基づいて本件入会地についての入会権者の地位を取得したことを主張立証しなければならないというべきである(最高裁昭和35年 (オ) 第1244号同37年11月2日第二小法廷判決・裁判集民事63号23頁参照)。
 そして,本件慣習によれば,上告人らが被上告人の会員の地位を取得したというためには,原則として,①上告人らが本件払下げ当時のA部落民又は明治40年から昭和20年までの間に一定の要件を満たしてA部落民と認められた者の男子孫であり,現在A区内に住所を有し居住していること,②上告人らがA区内に住所を有する一家の世帯主(代表者)であり,被上告人に対する届出等によってその役員会の議を経て入会したことという要件を満たす必要があるということになる。
 (2) ところで,入会権は,一般に,一定の地域の住民が一定の山林原野等において共同して雑草,まぐさ,薪炭用雑木等の採取をする慣習上の権利であり(民法263条,294条),この権利は,権利者である入会部落の構成員全員の総有に属し,個々の構成員は,共有におけるような持分権を有するものではなく(最高裁昭和34年 (オ) 第650号同41年11月25日第二小法廷判決・民集20巻9号1921頁,最高裁平成3年 (オ) 第1724号同6年5月31日第三小法廷判決・民集48巻4号1065頁参照),入会権そのものの管理処分については入会部落の一員として参与し得る資格を有するのみである(最高裁昭和51年 (オ) 第424号同57年7月1日第一小法廷判決・民集36巻6号891頁参照)。他方,入会権の内容である使用収益を行う権能は,入会部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものの,構成員各自が単独で行使することができる(前掲第一小法廷判決参照)。このような入会権の内容,性質等や,原審も説示するとおり,本件入会地の入会権が家の代表ないし世帯主としての部落民に帰属する権利として当該入会権者からその後継者に承継されてきたという歴史的沿革を有するものであることなどにかんがみると,各世帯の構成員の人数にかかわらず各世帯の代表者にのみ入会権者の地位を認めるという慣習は,入会団体の団体としての統制の維持という点からも,入会権行使における各世帯間の平等という点からも,不合理ということはできず,現在においても,本件慣習のうち,世帯主要件を公序良俗に反するものということはできない。
 しかしながら,本件慣習のうち,男子孫要件は,専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり,遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。
 男子孫要件は,世帯主要件とは異なり,入会団体の団体としての統制の維持という点からも,入会権の行使における各世帯間の平等という点からも,何ら合理性を有しない。このことは,A部落民会の会則においては,会員資格は男子孫に限定されていなかったことや,被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体では会員資格を男子孫に限定していないものもあることからも明らかである。被上告人においては,上記1(4)エ,オのとおり,女子の入会権者の資格について一定の配慮をしているが,これによって男子孫要件による女子孫に対する差別が合理性を有するものになったということはできない。そして,男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らし,入会権を別異に取り扱うべき合理的理由を見いだすことはできないから,原審が上記3(3)において説示する本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても,男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。
 (3) 上告人X4らについては,前記のとおり世帯主要件は有効と解すべきであり,家の代表者としての世帯主であることの主張立証がないというのであるから,本件入会地の入会権者の資格を取得したものとは認められず,上告人X4らが被上告人の会員であることを否定した原判決は,正当として是認することができる。この点についての論旨は,採用することができない。
 他方,上告人X1らは,A部落民以外の男性と婚姻した後に配偶者の死亡により世帯主として独立の生計を構えるに至ったものであるというのであるから,現時点においては,世帯主要件を満たしていることが明らかである。もっとも,上告人X1らが,被上告人の会則に従った入会の手続を執ったことについては,その主張立証がないけれども,男子孫要件を有する本件慣習が存在し,被上告人がその有効性を主張している状況の下では,女子孫が入会の手続を執ってもそれが認められることは期待できないから,被上告人が,上告人X1らについて,入会の手続を執っていないことを理由にその会員の地位を否定することは信義則上許されないというべきである。したがって,男子孫要件を有効と解して上告人X1らが被上告人の会員であることを否定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点をいう論旨は,理由があり,原判決のうち上告人X1らに関する部分は破棄を免れない。そして,以上の見解の下に上告人X1らの請求の当否について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官滝井繁男,同古田佑紀の各補足意見がある。
・・・・・・・・・・・・(以下省略)・・・・・・・・・・・・・・・
 (裁判長裁判官 津野 修 裁判官 滝井繁男 裁判官 今井 功 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)


 なお、判決文はブログの制限字数1万字をこえますので、
省略した二人の裁判官の「補足意見」については、
最近の主な最高裁判決(最高裁HP)をご覧ください。           
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「上野千鶴子さん講師拒否事件」の続報です。

国分寺市から、上野千鶴子さんの質問に対する回答が届きました。
以下に全文を掲載します。
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                        国教教生発第47号
                        平成18年2月13日
上野 千鶴子 様
                       国分寺市教育委員会教育部
                       生涯学習推進課長  熊谷 淳

            公開質問状について(回答)

 平成18年1月13日付,国教教庶収第484号文書,及び平成18年2月7日付,
国教教庶収第522号文書,市長,教育委員長,教育長,生涯学習推進課長
宛の2件の公開質問状について,下記のとおり回答します。

   記

(1)国分寺市教育委員会は,東京都教育委員会と実施計画書の内容に
ついて協議しましたが,東京都教育委員会の意向からモデル事業の
再委託を受けることは困難と判断し,本事業を実施しないこととし
ました。
   なお,地方教育行政の組織及び運営に関する法律第17条により,
  国分寺市教育委員会の権限に属するすべての事務を教育長がつかさ
  どっています。
   したがいまして,責任者は国分寺市教育委員会教育長です。

(2)国分寺市教育委員会は,不適切であるとの判断はしておりません。
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上野さんの人権講座を実質的に企画していたのは
国分寺市の実行委員会の市民のみなさんです。
上野さんの抗議文、公開質問状の経過をお知らせして来ましたが、
現場の当事者である市民の皆さんが出していた、
12月15日付の「公開質問状」の経過についても報告します。

この質問状に対して、
都教育庁から、2月7日付けの以下の回答が届きました。

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17教生社第636号
平成18年2月7日

「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会様

             東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長
                            船 倉 正 実

             公開質問状について

 平成17年12月15日に公開質問状をいただきましたが、本件に関する事実経過は下記のとおりです。
                    記

 本事業は、東京都教育委員会の事業として国分寺市教育委員会に委託し、実施を計画していたものであり、東京都教育委員会は、同市が企画中の内容が「『ジェンダー・フリー』という用語の使用に関する東京都教育委員会の見解」を踏まえたものであるかどうかについて問い合わせたものです。
 東京都教育委員会は、国分寺市教育委員会が都の委託事業であることを考慮し実施しないこととしたものと理解しています。
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この東京都教育庁の回答は、
上野さんへの回答と、まったく同じ文章です。

東京都教育庁が回答「公開質問状について」(2.9記事より)

質問の内容も趣旨も違うのに、まったくふざけていますね。
とりあえず、
うるさいから出したよ、というアリバイ証明でしょうか。
行政の説明責任を放棄しています。

国分寺市に対して、
「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会は、
2月5日に、再度「公開質問状」を出しています。


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国分寺市 市長殿
国分寺市教育長殿

経緯
 平成17年度文部科学省委託事業「人権教育推進のための調査研究事業」の実施にあたり、平成17年3月国分寺市は委託先である東京都に実施計画書を提出しました。
 実施計画書の提出を受け、東京都と国は了解の意向を示し、国分寺市は実施に向けての準備に入りました。
 国分寺市は実施計画書にある「モデル事業の特色、工夫した点、期待される成果等」に記載したように、準備会方式を取り、広く市民を公募し、13名の市民が集まり準備に取り組んできました。「人権教育」というテーマに沿って準備会では、多様な議論の結果、人権に関する学習機会の充実方策として次のような事業計画を練り上げました。

 メインテーマ 「当事者主権」
 障害者、高齢者、子ども、海外支援などの問題を取り上げ、講座や講演会、映画上映、ワークショップなどを開催する。

 しかし、準備会参加者は、東京都は当計画の中に講演予定者として上野千鶴子さん(東京大学社会学部大学院教授)が上がっている事を知り、「上野さんは講師としてふさわしくない。講師を変えないと委託できない」と伝えられました。今回の事業は「当事者主権」を学ぶ講座であり、東京都が「ジェンダーフリー」の用語使用を理由として、上野さんが講師としてふさわしくないとしたことは理解出来ません。準備会参加者は、講師変更要求は不当で、到低納得の行くものではなく、変更する根拠がない旨を国分寺市に伝え、準備会の計画通りの内容で正式に東京都に提出して欲しいとお願いし、公民館の理解を頂きました。また、その後、国分寺市が突然、生涯学習推進課長名で取り下げの事務手続きを取り、委託契約を断念し、事業の実施は出来なくなりました。
  国分寺市の取った行動に対し説明を求めます。

                     公開質問状
1.事業計画案は要綱に沿って作成したが、逸脱があったと考えるか。
2.2005年12月15日東京都の人権意識を考える市民集会実行委員のメンバーが都庁で都に対し、抗議文並びに公開質問状を提出し面談した際、都は「東京都は8月1日に国分寺市に赴き、生涯学習推進課長、公民館館長並びに担当職員と会い、「ジェンダーフリー」に関する都の見解を示し、これに触れる事業になる懸念はないか?国分寺市の判断を尋ね、国分寺市は持ち帰った。その後何の連絡もなく、取り下げの事務連絡が来たと言っている」がそのような事実はあったのか。
3.8月17日付 生涯学習推進課長名で東京都への事務連絡の中で、「両者協議の上」とあるが東京都と国分寺市はどのような協議をしたのか。又、準備会に何の連絡もなく取り下げの手続きをとったことに対してどの様に考えるか。
4.この経過の中で、市民の知る権利、並びに人権は、損われたという認識はあるか。
 上記の質問に関しては、2月20日までに文書で回答し、お送り下さるようお願いいたします。

2006年2月5日
東京都の人権意識を考える市民集会実行委員会
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国分寺市は上野さんに回答したのですから、
実行委員会にも回答が届くかもしれません。
今後の経緯を見守りましょう。

賛同書名に届いた意見(「東京都のに抗議する!」より)
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「上野千鶴子さん講師排除事件」の速報です。

この事件で「講師として不適切」となざしされた
当事者の上野千鶴子さんが、関係自治体へ公開質問状を
1月13日に送付していらっしゃいました。

上野千鶴子さんが東京都に公開質問状/毎日新聞(1/14付)

東京都・国分寺市への「公開質問状」(1/16付)

「回答期限は1月31日」とされていましたが、
現在まで、なんの応答もないようです。

この対応に対して、上野さんが関係自治体に
今日「督促状」を送付されました。
以下に、全文を紹介します。


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2006年2月7日

東京都知事殿
東京都教育長殿
東京都教育委員会委員長殿
東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長殿
国分寺市市長殿
国分寺市教育長殿
国分寺市教育委員会委員長殿
国分寺市教育委員会生涯学習推進課長殿

 2006年2月6日の時点で、1月末日に期限を設定した1月13日付け公開質問状に対する回答をいただいておりません。この手紙は再度時限を切って、文書による回答を督促するものです。次回の期限は2月20日とします。
 この期間にメディアの報道等によって、新たな事実関係が確認されましたので、それにもとづいて、質問の内容を変更します。したがって回答は、この督促状の指摘にもとづいて返答してください。

 事実関係については、
1)計画取り消しの意志決定を行ったのは国分寺市であり、その責任者は国分寺市教育
委員会生涯学習推進課長、熊谷淳氏であること
2)その意志決定を迫ったのが東京都であり、その責任者は東京都教育庁生涯スポーツ部社会教育課長船倉正実氏、および担当者は人権学習担当係長森川一郎氏、主任社会
教育主事江上真一氏であることが判明しました。それぞれの行政の最高責任者である国分寺市長と、東京都知事の責任については言うまでもありません。

 国分寺市教育委員会生涯学習推進課長から東京都教育庁生涯スポーツ部社会教育課長に宛てた平成17年8月17日付け事務連絡(添付資料)によれば、国分寺市事業の取り下げについて、「両者協議の上」という文言があります。またメディアの取材に対して、以上の事実経過については、国分寺市、東京都ともに事実を認めており、それについては争いがありません。

 したがって、
1)国分寺市には、計画取り下げの意志決定を行った責任があり
2)とはいえ、東京都の「介入」もしくは「調整」がなければこの意志決定は行われなかったわけですから、東京都には、依然として上野を講師として「不適切」と判定した説明責任があります。
以上の2点について、経緯を明らかにし、根拠を示してください。

 メディアの報道によれば以下のことが判明しています。
①上野教授には、「当事者主権」をテーマに初回の基調講演を依頼しようとして同(05年)7月、市が都に講師料の相談をした。しかし都が難色を示し、事実上、講師の変更を迫られたという。(毎日新聞2006.1.10)
②東京都教育庁生涯学習スポーツ部は「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・
フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」と説明する。(毎日新聞2006.1.10)
③都教委は04年8月に決めた「『ジェンダーフリー』という用語を使用しない」とする見解を示し、「講座がその方針に反するなら実施できない」と念押しした。(朝日新聞2006.1.28)
④都教委社会教育課は「都が委託するモデル事業である以上、都の見解に反した事業は実施できないと伝えた。中止は市が判断したのであり、都としては拒否はしていない」と話している。(朝日新聞2006.1.28)
⑤市は「講座でジェンダーフリーという用語や、関連する内容が出る可能性が否定できない」として提案を取り下げたという。(朝日新聞2006.1.28)
⑥東京都教育庁は・・・「講座でこの用語が使われる可能性があるなら実施できない」との判断を、同市に示したため、同市が提案を取り下げていた。(朝日新聞2006.1.31)
⑦都教育庁は「ジェンダーフリーという言葉だけを問題にしたわけではない」と説明している。(朝日新聞2006.1.31)
⑧石原知事は同日(1.27)の定例会見で委託拒否について「都はそういう規制を加えたこ
とはない」と述べた。(毎日新聞2006.1.28)
⑨石原知事発言録(1.27記者会見)「彼らが具体的に提唱している幾つかの事案に関して
は、とても常識で言って許容できないものがたくさんあるから。やっぱりそういう例外的な事例が、余り露骨にメディアに持ち上げられて出てくると、ジェンダーフリーの、ある正当性を持ったムーブメントでもね、私はやっぱり非常に誤解を受けると思いますよ。」(朝日新聞2006.1.31)
⑩石原知事発言録(1.27記者会見)「『ジェンダー』とか『フリー』とか言ったって英語
のわからない人はさっぱり、おじいさん、おばさんはわからんよ、そんなものは。日本語でやってくれ、日本語で」(朝日新聞2006.1.31)

 ジャーナリストの方々がこの件をとりあげ、独自に取材をされて関係者の発言を引きだしてくださったことに感謝いたします。またこの件について、都政の最高責任者である石原知事が発言したことは重要です。以上の報道に都が抗議した経緯がないことから、報道の内容を都は事実として認めたことになります。それをもとに改めて検討すれば、事態はわたしが当初認識していたよりも深刻であることが判明しました。
それについて以下に再確認したうえで、関係者の説明を求めます。

1) 取り下げの意思決定は市が行っているが、都が「難色を示し」(上記資料①)「認め
られない」「実施できない」(②③④)とくり返し、事実上の「拒否」をしたことはあきらかである。
2) 国分寺市から東京都宛の取り下げ文書のなかにも「両者協議の上」とある以上、中止の意思決定への都の関与は明白である。
3) 都の判断の根拠は、「用語に触れる可能性がある」というものであったが、さらに加えて「ジェンダーフリーという用語や関連する内容」(⑤)という発言がある。たんなる用語統制に加えて、「関連する内容」を問題にするのは「思想統制」にあたる。また、どのような発言や考え方が「ジェンダーフリーに関連する内容」に当たるのか、またそれを誰がいかなる基準で判断するのか。用語の使用禁止以上に踏みこんだ発言であり、見過ごすことはできない。
4) さらに都は「ジェンダーフリーという言葉だけを問題にしたわけではない」(⑦)と
発言している。それなら何が問題なのか。明らかにすべき説明責任がある。
5) 石原知事は、委託拒否について「都はそういう規制を加えたことはない」(⑧)と発
言しているが、以上の証拠から「規制」があったことは事実であるから、発言を訂正し、事実経過を明らかにすべきである。また石原知事が「都はそういう規制を加えるべきでない」と考えているなら、独自の判断で市に「規制を加えた」担当課長および関係者に対し、厳重に注意してもらいたい。
6) 石原知事は、「ジェンダーフリー」に対する誤解が「例外的な事例にもとづくメディ
アの持ち上げ方」によると発言した。とすれば、2004年8月の都教委による「ジェンダーフリー」使用禁止の通達が、一部メディアの偏ったプロパガンダに影響されたものであることを認めたことになる。したがって「誤解」にもとづいて「ジェンダーフリーの、ある正当性を持ったムーブメント」を抑圧した責任がある。(⑨)
7) 石原知事は「日本語」の使用を推奨しているが、上野もその考えには基本的に賛意を示している(前回別送資料1)。だが発言のなかで、「ムーブメント」というカタカナ言葉を自ら使用することで馬脚を露呈した。(⑨⑩)「テレビ」や「パソコン」はもはや「電影機」や「電脳」という言葉に置き換えられないほどにカタカナ言葉として定着しており、「ジェンダーフリー」だけが、その責めを受ける謂われはない。
8) 石原知事は発言のなかで、不用意に、「ジェンダーフリー」を分解し、「『ジェンダー』とか『フリー』とか」と二語にしている(⑩)が、「ジェンダーフリー」と「ジェンダー」とは異なる用語であり、混同は許されない。「ジェンダーフリー」の使用禁止が「ジェンダー」の用語の使用禁止に及ぶのは由々しい事態であり、国際的にも学問的にもけっして許容できない。朝日新聞報道における見出し、「『ジェンダー』使用不可 都」(2006.1.26)は重大な誤報であり、朝日新聞は直ちに訂正記事「『ジェンダーフリー』使用不可 都」(2006.1.31)を掲載した。学術用語としての「ジェンダー」と「ジェンダーフリー」とのかかる混同は、無知と認識不足から来るものであり、厳重に注意されたい。

 東京都および国分寺市の関係者の方々には、以上明らかになった追加情報を踏まえた上で、質問への回答を求めます。以上のような新しい展開を付け加える必要が生じたことは、もっぱら回答の遅延に原因があることを申し添えます。また本状は、内容証明郵便の書式に制限があり、かつ添付資料の同封が制約されるため、簡易書留郵便でお送りすることとします。

 なお、1月27日付けで東京都知事および教育庁に宛てられた女性学・ジェンダー研究者らによる抗議声明(1808筆の個人および団体の署名を伴う)によって、本件は、上野個人からの東京都および国分寺市への抗議の域を超え、「言論・思想・学問の自由」の行政による侵害をめぐる問題に発展しています。内外のメディアの注目も高く、本状に対する東京都および国分寺市の対応については逐一関係者に情報公開するつもりでおりますので誠実かつすみやかに説明責任を果たしてくださいますよう、要求いたします。

上野千鶴子
東京大学大学院人文社会系研究科教授

cc人権を考える市民の会/毎日新聞社/読売新聞社/朝日新聞社/日本経済新聞社/産業経済新聞社/東京新聞社/共同通信社/時事通信社/ジャパンタイムズ/日本女性学会/日本女性学研究会/日本ジェンダー学会/ジェンダー史学会/日本学術会議/内閣府男女共同参画会議/内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)
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東京都と国分寺市は、上野さんの質問状に、
回答するかしないかの返事もしないなんて、
いったいどういうつもりなんだろう。
上野さんの問いかけにも、わたしたちの抗議行動にも、
無視を決め込んで、問題をなかったことにしようというのか。
あまりの不誠実さに怒りを感じる。

なお、この事件の詳細および抗議行動については、
「東京都に抗議する!」をご覧ください。
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「上野千鶴子さん講師排除事件」の続報です。

1月27日(金)の東京都への抗議書提出のあと、
午後3時から、石原都知事の定例記者会見がありました。
 石原知事は、冒頭に
「構造計算書偽装問題」について意見を述べ、
あとは、記者との質疑応答。
そのなかで、上野千鶴子さんの講師拒否と抗議文提出、
「ジェンダーフリー」についての発言がありました。
東京都のwebサイトより、抜粋/引用して紹介します。

1/27石原都知事・定例記者会見録

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石原知事定例記者会見録
平成18(2006)年1月27日(金)
15:00~15:28

知事冒頭発言
構造計算書偽装問題にかかる分譲マンション居住者への支援について
             ・・・・・・・・・(省略)・・・・・・・・・
質疑応答
             ・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・
【記者】今日、国分寺市が都の委託で計画していた人権学習の講座で、東大の上野千鶴子教授を講師に招こうとしたところ、教育庁がジェンダー・フリーに対する都の見解に合わないと委託を拒否していたことが報道でわかりまして、それに対して、本日、ジェンダーの研究者たちが知事あてに、この上野千鶴子教授を講師として受け入れることの拒否について、これが言論、思想、学問の自由の侵害だと抗議する文書を知事あてに提出したんですが、これについてのお考えをお願いします。

【知事】ちょっとそのいきさつは違うね、あなたの認識と。詳しくは教育庁に聞いてください。ちょっと違いますな。都はそこまで具体的にですね、そういう規制を加えた覚えはない。ただ、何というんですかね、認識を示して、警告というかね。まあ詳しくはね、私が言うと誤解を生じるから教育庁に聞いてください。

【記者】もう1つ追加でお聞きしたいんですが、ジェンダー・フリーという考え方についての知事のお考えをお聞かせください。

【知事】さあ、この言葉そのものがいい加減あいまいな言葉だしね。これにかまけてやっている性教育なるものの教育方針というのは全く違うし、グロテスクだし、私は反対ですね。あんなものは認められないね。恐らく日本人全体に審判させたら、99%がそっぽ向くと思うよ。

【記者】しかし、研究者たちは、そのジェンダー・フリーと性教育というのは、その考えは、本来はそういう考えではないと主張していますが、それについてはどうですか。

【知事】それはだから、ディテール(詳細)のこと、あなた方が検証しなさいよ。私がそんなのいちいち聞き覚えしているわけじゃないんだから。だからね、ジェンダー・フリー、男と女の性というものの格差を埋めていくというのは結構ですよ。

 しかしですね、彼らが具体的に提唱している幾つかの事案に関しては、とても常識でいって許容できないものがたくさんあるから。そういう例外的な事例がね、あまり露骨にメディアに持ち上げられて出てくると、ジェンダー・フリーのある正当性を持ったムーブメント(動き、流れ)でもね、私は非常に誤解を受けると思いますよ。

 詳しくは、だから教育庁に聞いてください。
           ・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・
【記者】現在、東京都教育委員会では、「ジェンダー・フリー」という言葉を誤解を招くおそれがあるとして使わない方針を決めていらっしゃると伺いました。今後、知事はこの「ジェンダー」という言葉の使い方について、誤解がないように議論を重ねて理解を深めていくという努力をなさっていくおつもりはありますか。

【知事】何もね、日本なんだから英語使うことねえんだよ、わけのわからない英語をね。だからね、日本語にうまく訳せばいいじゃないですか。そうすればもっとわかりやすいよ。「ジェンダー」とか「フリー」とか言ったってね、英語のわからない人はさっぱり、おじいさん、おばあさんはわからんよ、そんなものは。日本語でやってくれ、日本語で。
はい。
          (テキスト版文責 知事本局政策担当 細井)
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発言を読むと、知事は、
「この問題から逃げている」
という印象を受けます。
やはり1808人の署名が、
かなりのプレッシャーだったのでしょうか?

「いちいち聞き覚えていない」「私が言うと誤解を生じるから」
って、まさか口頭で報告受けてるわけじゃないでしょ。

「ちょっと違いますな。都はそこまで具体的にですね、
そういう規制を加えた覚えはない」というのなら、
きちんと説明すべきです。

わたしだったら、
「知事なんだから、文書で報告受けてるでしょ。
それを見せてください」くらい反論しますけどね。

「ディテール(詳細)のこと、あなた方が検証しなさいよ。
私がそんなのいちいち聞き覚えしているわけじゃないんだから。」
って、なんか、記者会見だというのに言葉遣いも下品で、
記者さんたちも相当バカにされているようです。

強権政治で、気に入らないマスコミや職員に圧力をかけていた、
という梶原拓・前岐阜県知事を思い出しました。

ここは東京の記者さんたちも発奮して、
石原都知事の言葉を検証してほしいものです。

まあ、記者がやらないなら、
自分たちでやる、というのも、
ひとつの手ではありますが・・・・・・。

岐阜県の場合は、わたしたち市民団体が
県の情報公開制度を利用して、
おかしいと思う事業を一つずつ検証して、
前知事のやり方を批判/立証してきました。
結果として、今かなりの事業に見直しがかかっています。

そういえば、
石原都知事と梶原前知事は
「右寄りであたらしもの好き」と似ているのに、
互いにけん制しあって「犬猿の仲」でした(笑)。

こういうタイプの知事がトップだと、
不幸なのは市民、というのも、共通ですね。

「趣旨に反する」のはどちら?/
上野千鶴子さんの講師排除事件を検証する(1/31)

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国分寺市の「人権学習講座」の講師に、
上野千鶴子さんが東京都に拒否された問題の続報。

1月27日に、東京都に
「研究者や市民1808名の抗議文を提出した」ことが、
新聞記事になった。
岐阜には載らなかったけれど、
首都圏に住んでいるテルテルさんがFAXしてくれた。

毎日新聞の記事を書いたのは、
この事件のきっかけとなった1月10日付けの
初発記事を書かれた五味香織さん。
五味さんとは記者会見の会場で再会した。

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国分寺の人権学習講座中止問題
ジェンダー研究者ら抗議
都に署名1808人分を提出

 「ジェンダー・フリーに対する見解が合わない」として都教育庁が上野千鶴子・東大大学院教授(社会学)の講師依頼を拒否し、国分寺市の 人権学習講座が中止された問題で、ジェンダーの研究者や市民団体など は27日、石原慎太郎知事や都教育長らあての抗議文を1808人・6 団体分の署名を添えて提出した。
 抗議文は、都教育庁の対応について「言論・思想・学問の自由への重大な侵害。“憶測”で前もって言論を封じた、あるまじき行為」と批判している。提出後の記者会見で、呼びかけ人の一人、若桑みどり千葉大名誉教授は、「都教育庁の中で起こっていることが我々の研究にも及ぶ分岐点だと思った。言葉狩りだけでなく、非常に危機的な状況だ」と訴えた。上野教授も、月末までの回答を求め公開質問状を出している。
 一方、石原知事は同日の定例会見で委託拒否について「都はそういう規制を加えた覚えはない」と述べた。「ジェンダー・フリー」に対しては「言葉そのものがいいかげんで、あいまい。日本人なんだから英語を使うことはないんだよ」と話した。【五味香織】
毎日新聞 2006年1月28日
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他の新聞にも載ってないか調べてもらったら、
朝日新聞にも、大きな記事が載っていたそうだ。
記者発表には、20社くらい来ていたので、
東京新聞くらいにも載ると、
中日新聞にも載るかも知れない。

「ジェンダー」使用不可(都)
女性学研究者の排除(上野教授)
人権講座中止めぐり対立
研究者ら1808人署名、都に抗議

都の人権教育事業をめぐり、女性学の研究者、上野千鶴子・東京大大学院教授と都が対立している。上野教授が講師となる予定だった国分寺市での講座に対し、都教委が「ジェンダーフリーという用語が使われる可能性があるなら実施できない」とくぎを刺し、講座が中止になったのが発端だ。「都の事業なので、都の見解は踏まえてもらう」という都側に対し、教授側は「このままだと、女性学研究者は都の社会教育事業から排除されることになる」とする公開質問状を石原慎太郎都知事らに送付。27日には、研究者らが都に抗議する事態になっている。--------------------------------------------朝日新聞(1月28日付より一部引用)
(えっ朝日さん、「ジェンダー」使用不可、って見出し、
「ジェンダーフリー」の間違いじゃないの???)

明日は、上野さんが、外国特派員協会で、取材/スピーチを頼まれているそうだ。
あさって31日は、上野さんの公開質問状の回答期日。
とうぶん、この問題から目が離せない。
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「上野千鶴子さんの国分寺市「人権講座」委託介入に対する
東京都への抗議の申し入れ」のレポート。
ブログやML、メールなどで署名を呼びかけたみなさまに、
お礼を兼ねて、報告させていただきます。
最終的な署名数は、なんと1808筆。
北海道から沖縄まで、研究者から市民まで、
女も男も、性別や分野を越えて、
多種多様なひとから届きました。
うれしい報告です。

詳細は「東京都に抗議する」をご覧ください。

昨日は、午前6時半ごろ出発。
東京行きは19~20日の行政視察から一週間ぶり。

また走る「のぞみ」のデッキから、富士山を撮りました

JR新宿駅西口から都庁までは直通の地下道がつくられてて、
横にはなんとうごく通路まであります。
地下道を抜けると、青空にそびえ立つ都庁。
(手前は、都議会議事棟)
こんなところで、まいにち仕事してたら、
たしかに市民感覚なくなりますねぇ。

スケジュールは、
「11:50~12:00、第二本庁舎27階で
東京都/教育委員会に申し入れ」、
「13:00~14:00、第一本庁舎6階で
東京都庁記者クラブで記者会見」の予定です。

第二本庁舎に、集合時間より30分ほど早く着いたので、
まずは興味深々の豪華庁舎をウォッチング。
あまりに広くて迷子になりそうだったので、集合場所にもどって、
はやめに着かれた呼びかけ人のみなさんと話していました。
全員がそろって、打ち合わせのあと、いざ27階へ。

午後の記者会見のまえに、11時50分から10分間、
呼びかけ人、賛同人、実働スタッフの14~5人で、
東京都に抗議文をわたしました。

抗議文を受け取ったのは、所管課ではなく、
教育委員会・総務部教育情報課長の森田さん。
肝心な時に当事者は逃げる、のは、行政の常です(笑)。

冒頭の手渡すセレモニーだけ、10人ほどの報道関係が写真撮影。
その後、関係者だけが残り、呼びかけ人の
若桑みどりさん、米田佐代子さん、
細谷実さん、加藤秀一さんの4人が自己紹介。
呼びかけ人を代表して、若桑みどりさんが
たった3日で1808人の署名があつまったことを伝え、
抗議文を朗読して、うけとった森田さんが
「責任を持って所管課に渡します」と答えました。

あわただしく議事棟の1階で食事をすませたあと、

午後1時からは、第一本庁舎6階の会見会場で、
東京都庁記者クラブに記者発表。
若桑さんが抗議文を読みあげられたあと、
呼びかけ人のみなさんが報道各社の質問をうけました。
(記者会見は予定の1時間を大幅に越え、
3時から石原都知事の会見があるため、
広報課はやきもきしていたようです)。

わたしは資料のことなどでバタバタしていたので、
詳細は聞き逃しましたが、呼びかけ人のみなさんは、
全国紙、日刊紙はもちろん、「世界日報」の質問にも
ていねいに答えていらっしゃいました。

世界日報記者の、
「上野さん自身が公開質問状を出しているのに、
なぜ都の回答の前に出したのか」という質問に対し、
若桑さんは、まようことなく、
「かんたんなことです。上野さんを孤立させないために、
都の回答を待たずに行動をおこしました」
と明快におっしゃいました。

この言葉が、こころにズシンと響き、
涙があふれそうになりました。

わたしも、同じ思いです。

立場や考えの違いはそれぞれですが、
きっと、
東京都に抗議の意志をとどけたいという思いが
全国各地をかけめぐり、たった3日間で、
1808人もの賛同署名が集まったのだと思います。

昨日手渡したのは、抗議文と
14ページにわたってびっしりと賛同者名が連なる署名簿。
東京都は、この署名の意味を重く受け止めて、
真摯に対応していただきたいと思っています。

東京都には、行政としての
応答責任と説明責任があるはずです。
今回の事件で、行政内部でなにが起きたのか、
上野千鶴子さんの質問に、誠実に答えてください。

◇      ◇      ◇      

ご参考までに、昨年、豊島記者が書かれた関連の、
2005年6月29日付「南日本新聞」記事も紹介します。

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      「■ジェンダーフリー教育問題 本紙記事「でたらめ」
 吉野正二郎鹿児島県議会議員は28日の県議会一般質問でジェンダーフリー教育問題について、同教育を批判する書籍を引用する形で、南日本新聞の記事(2003年8月5日付)を「でたらめ。あることをなかったことにして報道した」と批判した。
 記事は同年6月、吉野議員の県議会一般質問での発言を受けたもの。行き過ぎた教育の実例として、(1)川崎市や福岡県立大牟田北高校で体育の時間など男女が一緒の更衣室で着替えさせられた(2)東京・国立市の高校は修学旅行で男女が一緒の部屋で宿泊させられた(3)川崎市の公立中で男女一緒に身体検査を受けさせられた-などと摘したが、当該自治体や学校が事実を否定している、という内容だった。
 吉野議員はこの日の議会で、取材記者を名指しし当時の報道を「私が根拠のないことを言っていると感じられる」と批判。「事例に挙げた中学や高校の父母から直接聞いた話」と強調した。
 一方、関係自治体や学校側は28日、南日本新聞の電話取材に対し、吉野議員の指摘をあらためて否定した。
 大牟田北高校の近藤博文教頭は「当時も今も男女が同じ更衣室で着替えることはない」。川崎市教育委員会健康教育課の藤原淳子指導主事は「まったく事実でない。ありえないし迷惑」。都教委高校教育指導課の上村肇主任指導主事は「聞いたことがない。万一あったら地元で大騒ぎになる」と否定した。
 -記事はきちんと取材-
 有川賢司南日本新聞社編集局長の話・吉野議員が指摘した南日本新聞の記事はきちんとした取材に基づいている。今後も的確な報道を続けていく。」
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(6月29日付「南日本新聞」記事より一部引用)>


東京都への抗議行動に賛同し、
行動してくださったみなさん、
ありがとうございました。

[PR]
速報です。

今回の「東京都が上野さんの講師選定を拒否した」事件について、
上野千鶴子さんの原稿が、昨日の、
信濃毎日新聞と熊本日日新聞の1月23日付
連載コラム「月曜評論」に掲載されました。

昨日アップした「東京都に抗議署名を!」の署名も、
全国のこころある方たちから、ぞくぞくと集まってて、
1500人は越えているようです。

このURLは転載・転送自由で、
あちこちのブログでとりあげられています。

署名の締め切りは、明日1月26日正午。
まだ間に合います。


あなたもぜひ、上野さんの記事を読んで
署名に参加してください。

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ジェンダー・フリーをめぐって 
         上野千鶴子

 東京都知事とけんかを始めた。
 正確にいうと、売られたけんかを買っただけで、こちらから売ったわけではない。毎日新聞 (2006年1月10日付け)に「ジェンダー・フリー問題:都『女性学の権威』、上野千鶴子さんの講演を拒否/用語など使うかも…『見解合わない』理由に拒否--国分寺市委託」の記事が掲載されたので、知っている人もいるかもしれない。
 主催側の市民団体の方たちから、都の委託事業で国分寺市が主催する人権講座に、「当事者主権」のテーマで講演してほしいという依頼を受け、それが都の介入によって取り消しになった経過説明を受けていた。だが、都の説明文書があるわけではなく、もっぱら伝聞情報ばかりなので、反論のしようがない。毎日新聞の記者が、都の東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長に取材して、発言を記事にしてくれた。それでようやく言質がとれた。
          *          *
 それによれば「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」とある。私は女性学の権威」と呼ばれることは歓迎しないが、女性学の研究者ではある。都の見解では、「女性学研究者」すなわち「ジェンダー・フリー」の使用者、という解釈が成り立つ。わたしに依頼のあった講座は、人権講座で、タイトルにも内容にも「ジェンダー・フリー」は使われていないのに、「可能性がある」だけで判断するのだから、おそれいる。世の中には、「ジェンダー学」を名のる研究者も多く、それらの人々はましてや「ジェンダー・フリー」を使う可能性が高い。そうなると、女性学・ジェンダー研究の関係者は、すべて東京都の社会教育事業から排除されることになる。
 わたしは石原都政以前には都の社会教育事業に協力してきた実績があるし、現在でも他の自治体からは教育委員会や男女共同参画事業の講演者に招聘されているのだから、都にとってだけ、とくべつの「危険人物」ということなのだろうか?
 看過するわけにいかないので、公開質問状を、石原慎太郎東京都知事、東京都教育委員会、国分寺市、国分寺市教育委員会等に1月13日付けの内容証明郵便で送った。意思決定のプロセスを明らかにし、責任が誰にあるのかを問うことと、上野が講師として不適切であるとの判断の根拠を示すように求めたものである。回答の〆切は1月末日。
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 こういうやりとり、おそらく石原知事は「余は関知せず」というだろう。都庁の役人が、都知事の意向を忖度(そくたん)してやったことと思うが、この時期に都の生涯学習スポーツ部社会教育課長という職にたまたま就いていた人物は、自分がどんな地雷を踏んだかに気がついていないだろう。この役人も、おそらく石原都政前には別な判断をしていただろうし、石原政権が交替すればまたまた変身するかもしれない。すまじきものは宮仕え。ご苦労さんとは思うが、ことは上野個人の処遇に関わらない。ゆきすぎた「ジェンダーフリー・バッシング」には徹底的に反論しなくてはならない。
 公開質問状は主要メディアにも同時に送付した。現在までのところ、毎日とNHKは報道、朝日と時事通信からは取材、日本外国特派員協会からもコンタクトがあった。本欄の読者の方たちは、これで初めて知ることになるだろうか。今後の帰趨(きすう)を見守ってもらいたい。
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(信濃毎日新聞・熊本日日新聞2006/1/23付「月曜評論」記事より)



「東京都に抗議!」の署名はここから。
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ひさしぶりに会った友人から
「みどりさんて、ようわからん人や
とずっと思っとった」と言われた。

やりたいときにできることをしてきただけなのに、
「会うたびに変わっててつかみどころがない」
「あなたのアイデンティティは一体なんなの」と
親しくなったころに友人からけっこう言われてきた。

小さいころから、他人様だけでなく、
家族からも「変わった子」と言われつづけたわたし。
生き延びるために、その場その場を切り抜けてきた。

「アイデンティティ?そんなもんないよ」と答えるかわりに、
「あなたの知ってるわたしが、わたし」
と煙にまいてきた。
アイデンティティなんかなくったって、
わたしはちっとも困らない。

上野千鶴子[編]の最新刊、『脱アイデンティティ』。
(上野千鶴子編/勁草書房/2005.12.20)

人はアイデンティティなしでは生きられないのか?
一貫性のある自己とは誰にとって必要なのか?
賞味期限切れの概念に問題提起。


一読して、帯のコピーに共感した。

先日、上野さんの研究室におジャマしたとき、
できたてのホヤホヤを「はい」と手渡された。
表紙と目次をぱらぱらと見ただけでおもしろそう。

アイデンティティの理論の革新は、アイデンティティ強迫や統合仮説と対抗してきたが、それらの努力は、「宿命」としてこの強いられた同一性から逃れたい、または逃れる必要があると考える、(少数派の)人々によってこそ担われた、と。

「版元から送ってあったから」ということで
本はするりとわが手から抜け・・・・・。

読みたくてたまらなかったが、がまんガマン。
家に帰って、届いていた本をいっきに読んだ。


『構築主義とは何か』(上野千鶴子編/勁草書房/2001)の続編にあたるこの本は、1章から8章まで内容も執筆者も多彩である。『下流社会』(光文社/2005)の三浦展さんも、わたしが好きな『民が代斉唱』(岩波書店/2003)のチョン・ヨンヘさんも書いている。他の執筆者は、伊野真一、浅野智彦、斎藤環、平田由美、小森陽一、千田有紀さん。千田さんと伊野さんは『構築主義とは何か』にも執筆している。
「序章 脱アイデンティティの理論」と「終章 脱アイデンティティの戦略」を編者の上野さんが執筆している。

 アイデンティティの理論そのものが解放的であったり、抑圧的であるわけではないように、脱アイデンティティの理論そのものが解放的であったり、抑圧的であるわけではない。脱アイデンティティは、ある種の人々からは「病理」と見えるだろうし、べつの人々にとっては、「解放」と見えるだろう。・・・・・・ツールとしての社会学的理論は、文脈に応じて、どんな使い手にも奉仕する。だが、最後にもう一度確認しておきたいことがある。たとえそれが意図に反した利用をされることがあったとしても、どのような理論も、それを必要とする切実な動機づけを持った人々の努力によって、つくられ、変容してきたのだ、と。 <終章 脱アイデンティティの戦略>より

「脱アイデンティティ」を「解放」の理論と見るわたしは、
どうやら「病理」とウラオモテ/紙一重の人生を生きてきたらしい。

『脱アイデンティティ』が読めなかったので(笑)、
新宿の紀伊国屋で『at[あっと]2号』を買った。

活字中毒のわたしは、ホテルと新幹線で、2度読んだ。
さいしょは本の全部を。2度目はじっくりと、
上野さんの連載「ケアの社会学」だけを。

今回は《第一章 ケアに根拠はあるか》
1 なぜ高齢者をケアするのか?
2 介護は再生産労働か?
3 階層問題としての介護
4 家族介護とは何か
5 援助は正当化されるか?
6 家族に介護責任はあるか?


『at[あっと]1号』「序章 ケアとは何か?」
(10/6付記事)はこちらから


今回の論文に引用されている
『資本制と家事労働 マルクス主義フェミニズムの問題機構』
(上野千鶴子著/海鳴社/1985)がなつかしい。
わたしがさいしょに読書会をした本だ。

「解放の理論というものは社会の理論を必要とする。」

「フェミニズムは、
未だないものをあらしめようという、理論的・実践的な営為である。
社会の作りかえのために、社会をとらえる理論的な枠組み自体を
作りかえようと模索する運動である。」


このとき、
上野さんの理論を学ぶとこころに決めた。

「思えば遠くにきたもんだ」。
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