カテゴリ:市民派議員になるための本( 52 )

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第5章 立候補をどう決めるか?
5‐1 出したい人より出たい人を

 「出たい人より出したい人を」というコトバを聞いたことがある人からは、エッ逆じゃないのと言われます。そのとおり。まったく逆の発想です。このコトバには、当選したら議会で、だれがどのように議員としてはたらくか、の決定的なちがいがあらわれています。わたしの意見を持ち、わたしの意思と判断で議員としてはたらくには、まず出たい思いの強い人であることが不可欠です。 
 往々にして「だれかを出したい」「まちを変えたい」と走りまわる人が、もっとも思いが強い人です。だったらだれかを探すより自分で出たほうが話がはやい。やっと見つけた「出したい人」が当選したら体制に取りこまれていくケースは、残念ながら多いようです。ヒトからたのまれて出た候補者は、自己決定の連続の議会で、なかなか、よい無党派・市民派議員にはなれません。
 「市民型選挙はお祭りだ」と書きましたが、無党派・市民派候補者はミコシの上には乗りません。候補者は、先頭でミコシをかつぐ人。候補者が、ミコシの上であぐらをかいている選挙は、市民型選挙ではありません。みずから情報を収集し、考え判断し、行動するのが市民型選挙の候補者です。選挙で当選し、翌日から議員としてはたらくのは、候補者自身です。だから候補者は、仲間や市民とおなじ平場で、候補者自身がカナメとなり、いちばんさきを歩き、状況をよく知ることが大切です。
 仲間のなかから候補者を選ぶとき、もっとも信頼され、リーダーシップのある人が、候補者になるのがいちばんです。でも、もしその人がまったく政治に興味がないなら、説得するのは「時間のムダ」。内心、立候補してもよいと思っているのに「だれかに推されて出たいわ」と、自己決定もせず、ヒトに責任を転嫁する人はロンガイ。
 多くの選挙を見てきた経験から言うと、政治を変えたいという思いの強い人が候補者になるのがベストです。
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4‐3 市民型選挙は、人を変えまちを変える

 市民型選挙の原則は「他の候補者とちがうことをする」「ヒトのしないことをする」ということです。キーワードは「変える」です。なにもないのを強みにして、選挙を、政治を、まちを、現状を「変えたい」という思いを、市民に印象づけましょう。
 投票は、候補者への先行投資。市民は「わたしが動けばまちが変わる」という政治に対する期待感を一票に託します。 
 多くの人が市民派候補の名前を書いて投票箱に入れたとき、まちは確実に変わります。当選しても、しなくても、です。結果はあとからついてきます。
 有権者は、ナマエもカオも知らない人の名前はなかなか書いてくれません。前回まで「○山〇男」と書いていた白紙の投票用紙に、はじめての「○田〇子」と書くというのは抵抗があるものです。きのう会ったからといって、きょう投票してもらえるものでもありません。
 市民派候補の名前を書いてもらうためには、ネットワークをつくって、あらゆる表現で、有権者に政策やメッセージを届けることが大切です。メッセージが届いてはじめて、市民は「なにがいちばん大切か」を考えはじめます。目には見えないけれど、市民がだれかに頼まれたわけでなく、みずからの意思で「この人に入れる」と決めるとき、人は変わります。
 市民型選挙で「当選する」「結果を出す」というのは当面の着地点です。そこに行きつくまでに、たくさんの出会いがあり、感動があり、ドラマがあります。感動は人のこころを動かします。市民型選挙をすすめていくなかで、候補者も仲間もきたえあい共に育ちます。メッセージを受けとった市民も変わっていきます。
 選挙はけっして一方通行ではありません。
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4‐2 市民型選挙の行動3原則

 88年に出会った上野千鶴子さんの『女遊び』。冒頭から読むとヒトマエではとてもひらけない(と思う)ヒトがいるかもしれない本ですが、後半には「女性学」「組織論」「おんなの運動論」が明解に書いてあり、わたしは強く共感しました。なかにこんな一節があります。
 「日本の反体制運動の中には、ネットワーク型運動の先例がある。60年代に広がったベ平連の運動である。ベ平連の運動はそれ以前に1960年の三井・三池闘争の中で谷川雁さんたちがになった「大正行動隊」の行動原則にお手本を持っている。
その行動3原則は、
 ①やりたい者がやる、やりたくない者はやらない。
 ②やりたい者はやりたくない者を強制しない。
 ③やりたくない者はやりたい者の足をひっぱらない。
 という簡単なものである。言ってしまうと簡単なようだが、よく考えぬかれている。」 この行動3原則を、そのまま現場でカタチにしたものが市民型選挙です。
 これを「選挙3原則」と大きく書いてカベにはれば、あなたのまちで選挙の歴史と常識をぬりかえる、アッとおどろく画期的な市民型選挙が実現できます。 
 ①に行動をつけくわえるなら、「やりたい人がやりたいことをする。やりたくないことはやらない」です。「やりたくないこと」はとってもカンタン。「いままでの選挙のここがイヤ!」と思うことを、ぜんぶやらなきゃいいんです。
 市民型選挙は、一票から積みあげる、たし算、かけ算の選挙です。「やりたいこと」は、チエと工夫で実行に移しましょう。選挙に正解はありません。

《参考文献》
『女遊び』上野千鶴子著、学陽書房
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『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
第4章 市民型選挙をたのしもう
4‐1 市民型選挙はお祭りだ!

  市民型選挙は、4年に一度のおんなたちのお祭りです。
 わたしたちにはなにもありません。だけど、ヒトのつながりという財産があります。この財産だけは使っても減りません。あとからあとからわいてくる「打出の小槌」のようです。なかまたちは、たのしい祭りに参加したくて、わくわくとまちのなかからわいてきます。
 選挙カーは「うごく舞台」。仲間がならんで手をふって、候補者がマイクから思いのたけを語れば、そのコトバに耳をかたむけてくれる人がいます。共感して拍手し、握手を求めてくる人もいます。
 選挙カーから手をふれば、遠くから「ガンバレヨー」とふりかえしてくれる人もいます。ヒトとヒトとがつながることの確かさを、選挙で感じることができます。これはとてもユカイな経験です。
 市民型選挙は参加型選挙だから、政策も自分たちでつくります。「わたし」の提案がリーフレットとしてかたちになり、政策になります。リーフレットを持ってまちに出れば、たくさんの出会いがあり、市民からはげましを受けます。多様な個性が、アイデアを出しあってなにかをつくりあげるって、ほんとうにたのしいものです。
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『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
3-5 市民型選挙の注意事項

 市民型選挙をするときの、基本的な注意事項をあげてみましょう。
①ひとりよがりにならない。
②ちいさくまとまらない。
③市民より意識が高い、わたしたちがゼッタイに正しいと、思わない。
④有権者の受信能力をあなどらない。
⑤どんなによい政策でも、選択するのは有権者。
⑥ムードだけの選挙にしない。
⑦メッセージを有権者に確実に届ける作戦を立てる。
⑧ひろがっているハズ、というおもいこみは通用しない。
⑨ひとつずつやりたい仕事、できる仕事を、確実にこなしていく。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
3‐4 市民型選挙のおちいりやすいワナ

 市民型選挙にもおちいりやすいワナがあります。「教科書問題」「高速道路反対」などの個別の政策課題は、その人にとっては切実な問題かもしれませんが、これだけを政策としてかかげても当選しにくい傾向があります。
 なぜなら、特定の課題は、だれもが興味をもっているとは限らないからです。個別課題では、それに興味をもち、共感した人にしか投票してもらえません。だから個別課題ではなく、できるだけひろい範囲の政策を立てましょう。この注意は、市民運動出身の市民派候補者には、とくに大事なように思います。
 市民運動をやってきて、選挙も経験して学んだことは、「わたし」が正しいと思う政策だけをあげても、選挙になりにくいということ。それはなぜだろうと考えたとき、「市民がのぞんでいることはなにか?」という発想の転換がおきます。市民運動をやっていると、「わたし」のアピールを受けとらないほうがわるい、聞かないほうがわるいと思いこみます。「わたしたち正しいことをやってるのに、理解しない市民がわるい」って。わたしもそうでした。でも伝えたいことが伝わらなければ、言葉を発する側の伝えかたがわるいのです。「受け手にどんなメッセージを届けたら受けとってもらえるだろうか?」という発想は、市民運動だけを必死にやっているときは、余裕もないし、なかなか思いうかびません。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
3‐3 だれでもできる市民型選挙

 「だれでもできる」というのは、「タダの市民なら」という意味です。そうじゃない人が、カタチだけ市民型選挙のマネをしようとしてもうまくいきません。それはなぜでしょう?
 市民型選挙のいちばんの特徴は、選挙をになう市民と候補者が、いまある権力構造、利益誘導型の政治の恩恵にあずかったことのない人たちだということです。そこからぬけおちた人、谷間にこぼれおとされた人、そして自分の意思でぬけた人も含みます。
 現在の政治は、行政と議会が強い権力と権限を持ち、政党や地域ボスや土建屋が、カネとモノをまわしあっています。市民型選挙は、そこからまったくはずれた市民が候補者になり、おなじ立場の多くの市民にメッセージを伝える選挙です。そういう人なら「だれでもできる」選挙です。
 「わたし」のいままでの思いを「あなた」に伝えれば、市民から市民へと思いは確実に伝わっていきます。わたしのくやしい思いや、毎日のくらしで疑問に感じていることが、そのまま政策になっていきます。
 「わたし」がいままで思っていたことを、言葉で表現すると、権力構造のなかにいる人たちは、「なにをバカなことを言ってるんだろう」と思うようですが、市民は共感してくれます。
 市民から市民へ、コトバにのせた思いのリレーが市民型選挙です。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
3-2 従来型選挙とどう違うか?

 選挙の常識とルールをくつがえし、これまでの選挙の地図をぬりかえているのが市民型選挙です。
 従来型選挙は、「ジバン・カンバン・カバン」を必要条件とする組織選挙です。その3要素が、大きくて強固なほど当選の可能性が高いというのが、これまでの「選挙の常識」でした。
 なにも持たない市民が、おなじ武器でたたかったら勝つ見こみはないでしょう。それに選挙は、他の候補者とたたかうものではなく、候補者の「わたし」の政策を、有権者の「あなた」に信任し、投票してもらうものです。だから、他の候補者のやりかたを気にすることはありません。
 市民型選挙では、市民と平場(タテ型ではなくヨコにつながる)の関係であることを大切にします。候補者も有権者もおなじ目線の高さにいる、ということです。他の候補者は、政党や組織のなかにいたり、地域のボスだったり。市民とちがう高いところにいる人が、おカネや組織を使って「一票ください」と言ってきます。
 市民型選挙は、おなじ場にいない人たちにはなかなか見えません。肩書がない候補者なんかと言われます。「肩書がない」ということは、いままでの選挙ではいちばん不利な条件のはずでした。でも肩書がないことに市民は共感します。「組織がなかったら当選しない」というのは、選挙の重要な常識のひとつでした。でも「トップダウンではないネットワーク型」なら、組織がなくても当選できます。
 従来の候補者は、だれかからの指示や日当がないと市民は動かないと思っているようです。選挙で名前を大声で叫べば有権者は投票すると思っています。ほんとうにヒトをバカにした発想です。人間関係のしがらみを使って動員をかけ、政策をあきらかにせず、演説もしないで「票を取る」という発想。こんな貧困な発想や従来型の選挙に、市民はあきあきしています。
 もうオヤジ議員にはまかせておけない! 感性の鈍いオヤジ候補は、議会でイネムリするよりも、縁側でイネムリしててほしいものです。
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『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
第2部 勝てる選挙
第3章 市民型選挙とは・・・

3-1 市民型選挙とはなにか?

 「組織もない女性が、どうしてこんなにたくさんの票をとって当選できるんですか?」-市民派候補が大挙して当選した‘99統一自治体選挙の直後、「女性を議会に!」の運動をになっていたわたしのところに、マスコミから殺到した質問です。この問いに、わたしなりにこたえてみましょう。

 「市民型選挙」は、ネットワーク型選挙ともいい、組織ではなく、個人から個人に、候補者のメッセージを届ける選挙、「ジバン・カンバン・カバンを持たないタダの市民が」「仲間で政策をつくり、おカネをかけないでやる」選挙です。
 組織にいる男たちや政党の人、地域選出の候補者など、いままで選挙を一回でもやったことがある人たちからは、「組織もない個人が、女ばかりあつまって、あんなやりかたで当選するハズがない」と言われます。
 ところがイザ開票すると、現実に無党派・市民派候補者は当選していきますし、なかにはトップ当選の人もあります。
 選挙は、基本的に「候補者の考えを有権者に伝える」ものです。有権者は、たくさんの候補者のなかから、意中の人の名前を投票用紙に書きます。
 従来の候補者は「入れてくれたら見返りをあげましょう」と利益誘導し、有権者も、「票はカネだ」と思っている人はカネで、義理が大事と思っている人は義理で投票します。政党や自治会など組織のウエからの指示で投票する人もいます。
 でも、市民型選挙をするわたしたちにとっては、有権者は“数”としての票ではなく、ひとりひとりが意思を持つ“人間”です。
 「議員になってなにがしたいか」「議会でどのようにはたらきたいか」を、ばくぜんとした有権者一般にではなく、ヒトからヒトへの個別の関係のなかで確実に届け、伝えていくのが、市民型選挙なのです。

《法条文》
・憲法第15条①②③④(→2-2参照)
・憲法93条②(→1-3参照)
・〔この法律の目的〕 公職選挙法第1条
・〔議員及び長の選挙〕 地方自治法第17条
・〔選挙権〕 地方自治法第18条
・〔議員及び長の被選挙権〕 地方自治法第19条
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_本のあとがき_______________________________________________
-「産婆」役の立場から-
     
 昨年11月に本の企画を立ててからおよそ1年。十月十日月満ちておぎゃあと本が生まれた。書いたのは寺町みどりさん。この人は書ける、書くべきメッセージを持っている、とわたしは確信し、「産婆」役を買って出た。 孕んで産んだのはみどりさん。わたしはそれを手助けしただけ。
 「無党派の風」なんて言うが、どちらを向いて吹いているのか、皆目わからない。長野県の田中康夫と東京都の石原慎太郎がいっしょに扱われるのも、なんだかおかしい。千葉県の堂本暁子に吹いた風と、大阪府の太田房江を押し出した風が同じとも思えない。「無党派って、なあに? わたしにわかるように説明してください」から、本の企画は始まった。
 無党派・市民派はどの議会でも少数派で孤立している。議会のなかには味方がいないが、議会のそとには仲間がいる。政党は新人議員でも守ってくれるが、無党派には市民以外に、だれもうしろだてがいない。そろそろ無党派・市民派の議員たちの経験とノウハウが蓄積され、伝達されていい頃だ。そう思ったら、「む・しネット」のなかには、おどろくべきノウハウが宝の山となって蓄積されていた。
 議員体験記なら他にもあるが、ここまで周到に目配りよく、議員になるまでと議員になってから遭遇するさまざまな課題に、こんせつていねいに応えている本はあるだろうか? 既成政党の議員さんたちが読んでも役に立ちそうなのが、こわいくらいだ。出たいひとにも、出したいひとにも、続けたいひとにも、選びたいひとにも、それぞれに役にたつ、かつてない本だと思う。
 この本をゲラの段階で読んだ市民派議員のひとり、ごとう尚子さんが「本
が売れた数だけ、議会が変わると思います」と感想をくれた。そのフレーズをいただいて、こんなキャッチコピーをつくりたい。
 「この本が売れた数だけ、日本の政治は変わるでしょう。」
                     上野 千鶴子
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