カテゴリ:市民派議員になるための本( 52 )

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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)2-4 無党派・市民派議員になにができるか?
       
 無党派・市民派議員になにができるか、カンタンに整理してみましょう。
 まず議会で、①一般質問をする、②条例案の審議をする、③予算案の審議をする、④決算認定の審査をする、⑤議案について討論し、賛否の意見を表明する、⑥表決により議案に対する賛否の意志を示す、⑦慣例や前例を変え、議会改革をする、⑧政策を提案し、実現する、⑨政策を評価する、⑩請願の紹介議員になる、ことができます。
 自治体(まち)では、①まちに出て市民の声を聞く(情報収集)、②市民に情報(ニュース)を発信する、③市民といっしょに政策を研究する、④情報公開請求する、⑤住民監査請求する、⑥市民運動に参加する、ことができます。
 まちの外では、①情報を収集する、②先進地に学ぶ、③ネットワークをつくり他のまちの議員と交流する、④議員の勉強会に参加する、などがあります。
 無党派・市民派議員は、4年間の議員の任期のうちに、議会や政治の現場で、地域社会で、まちの外で、たくさんのことができます。そのためには、まず選挙で当選しなければなりません。
 第2部からは、「選挙」「議会」「政策」「市民」と、市民型選挙、行政や議会とのかかわり、仲間や市民との関係などについて、ひとつひとつ具体的に、経験とノウハウをお伝えしましょう。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)2-3  女ならだれでもよいのか?

 では、女ならだれでもよいのでしょうか?
 この問いに対するわたしの答えは「女ならだれでもよいわけではない」です。なぜなら「女である」というだけで、手を組む理由がなにも見つからないからです。
 女ならだれでも、「権力指向ではない」のでしょうか。女ならだれでも「権威主義ではない」のでしょうか。女ならだれでも「弱い立場の人を大切にする」のでしょうか。女ならだれでも「ジェンダーの視点がある」のでしょうか。女ならだれでも「ひとを差別しない」のでしょうか。女ならだれでも「環境を大切にする」のでしょうか。女ならだれでも「利益誘導しない」のでしょうか。女ならだれでも「市民自治をめざす」のでしょうか。女ならだれでも「体制を変えたい」のでしょうか。
 わたしの答えはすべて「NO」です。では、男はすべてダメなのでしょうか。前項のすべての答えは、やはり「NO」です。
 女性議員をふやす運動にかかわると、「まず女性がひろく手をつなぎ、女性議員の数をふやそう」そして「女性議員がふえてから質を考えよう」という議論がかならず出てきます。この議論に反対すると、「ココロがせまい」「女の足をひっぱる女のテキ」と言われます。わたしは6年間、女がつながる可能性を運動の現場で模索してきましたが、いまはそこからはなれ「無党派・市民派」でつながる道を選びました。
 ただ女性議員の数だけがふえても、「女性差別を受けいれ容認し、強いものが弱いものを支配する現在の体制に賛成する」「政党に所属し、組織の論理を優先する」女性議員であれば、なにも現状はかわりません。むしろ現体制を補完し、既存の権力構造にはいり、男性議員といっしょに無党派・市民派議員を抑圧する側にまわるだけでしょう。
 政党という制度のなかで政党を変えようとガンバッテいる少数派の女性議員を否定するつもりはありません。また、党派を問わず、ひろく女性議員をふやす運動を否定するものではありませんが、そういう人たちには、まず自分の所属する政党や組織の改革をやっていただきたいものです。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
2-2 無党派・市民派議員とはなにか?

 自治体の議員は、選挙でえらばれた「特別職の公務員」です。
 憲法第15条には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」と定められています。このことは、議員が公平公正にその権限を行使し、利害のあい反する問題や、意見の対立する問題について、一部の人の利害ではなく、市民全体の利益とはなにかという判断をするということです。
 公平公正とはどういう意味でしょう? 市民全体の利益とはなんのことでしょう?
 議員は持っている大きな権力と権限を、どこに行使するのでしょうか?
 「政策」は、市民のすべてにまんべんなく効果をおよぼすわけではなく、特定のだれかに利益をもたらします。いままではそれが既得権を持っている人たちでした。では無党派・市民派議員はどこに立ったらよいのでしょうか?
 強い人と弱い人の利害が対立したとき、強者と弱者が争ったとき、だれから見てもその力の差はあきらかです。大きな力を持つ議員がまんなかに立てば、かならず強者を利することになるでしょう。議員の権限や権力が大きければ大きいほど、絶対的に弱者の立場に立ち、弱者の視点で判断するということが公平公正ということではないでしょうか。
 たいせつなのは、政党や組織に所属せず、数や権力や暴力などを行使する強者の論理を否定し、「わたし」の視点と弱者の論理で政治をすることではないでしょうか。
 わたしが考える無党派・市民派議員とは、強いものが弱いものを統治し抑圧するいまの社会の価値観を否定し、だれもが人間として大切にされ、よりよくくらせる地域社会をつくるためにはたらく「市民の政治家」のことです。
 「ジェンダーの視点を持ち、権力・権威を否定し、現行のシステムや制度を変えたい」と思っている人なら、男女を問わず手を組み、制度を変え、市民自治を実現できるでしょう。でも経験的には、そういう人に女性が多いのも事実です。

《法条文》
・憲法第15条「公務員を選定し及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
②すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
③公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
④すべて選挙における投票の秘密は、これを冒してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
第2章 無党派・市民派とは・・・        
2-1 無党派・市民派議員とはだれか?

 無党派・市民派議員とは、だれでしょう?
第1に、「市民の政治」を実践し、市民自治をすすめる市民自身です。
第2に、市民と平場でつながり、市民型選挙をする人です。
第3に、政党や組織に所属しない人です。
第4に、市民の視点で議会に立ち、「わたし」の考えで発言し決断する人です。
第5に、だれの代理代弁もせず、直接民主主義を実践する人です。
第6に、弱い立場の市民のためにはたらく人です。
第7に、利益誘導をしないで、公平公正にはたらく人です。
第8に、市民のための政策を提案し、実現する人です。
第9に、現行のシステムや制度をかえる人です。
第10に、差別や暴力のない社会の実現をめざす人です。

最後に、無党派・市民派議員とは、これらを自治体現場で実践するあなたのことです。
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『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
1‐5 「市民参加」とはいうけれど

 「地方自治の実践は、民主主義の学校であり、民主主義を成功させる最良の保証である」(ジェームズ・ブライス)
 21世紀のいま「行政と市民のパートナーシップを実現しよう」「市民参加をすすめましょう」というかけ声が聞こえてきます。だれが、どこに参加するの? なにかおかしいと、ここまで読んだあなたなら気づくことでしょう。地方自治の本旨から見れば、行政への「市民参加」ではなく、市民の政治に対する「行政参加」というべきでしょう。
 政策を執行している行政は、ほんとうは市民の代行者にすぎないのに、市民に対し権力を行使しています。行政と市民のパートナーシップという口あたりのよい標語のカゲで、行政「権力」とチカラのない「市民」が対等に手をつなげるなどという発想に酔いしれているうちに、市民のエネルギーはガスぬきされ、市民の自治意識はホネぬきにされていくのではないか、とわたしは心配しています。
 それならと、みずからの手で自治をつくりだそうとしているのが、無党派市民派議員です。以下の章では、無党派・市民派議員について、説明しましょう。

《参考》
・James Bryce(1838~1922)法学者・政治家

(コラム)

 市民参加
 「市民参加」とは、市民(住民)が、市民に深い関係のある自治体の政策の立案、審議、意思形成に自発的にかかわることです。じっさいには、行政主導による割り当てや動員など、市民の自発性や自主性によるものでなく、審議会で意見をのべるだけの、意思決定に影響を与えることのないのかかわりが「市民参加」と呼ばれていることが多いようです。 政策形成の過程で、行政職員や専門家だけでなく、ひろく市民の意見や意思を反映させる市民参加型の手法をとっている自治体もあります。
 市町村のような基礎自治体こそ、市民の直接参加を基本とする「直接民主主義型の市民参加」が実現できるのではないでしょうか。
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『市民派議員になるための本』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
1‐4 「市民の政治」とはなにか?

 自治体政治の現場では、利益誘導型の利権政治が横行しています。行政が、住民の福祉や安全や健康を上から与える行政主導の発想で動き、市民を統治し抑圧しています。 
  「市民の政治」とは、代議制の議会の限界を越える、直接民主主義をみずから実践する「市民による自治」にほかなりません。法律は意思決定においても「議会を置かず有権者による町村総会を設けること」を認めています。
 「市民の政治」の実現は、遠くにある目標ではありません。日々の「市民=わたしたち」のくらしの場で実践されるものです。
 憲法と地方自治法がつくられて55年。いくら待っても実現されない「画に描いたモチ」を、もうわたしは待ってはいられません。「市民の自治」は、市民自身が、あなたが、わたしが、いま・ここで、つくっていくしかありません。

《法条文》
・〔議会の設置〕 地方自治法第89条
・〔町村総会〕 地方自治法第94条
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『市民派議員になるための本・・・・立候補から再選まで』(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)
1-3 住民自治とはなにか?

 おさないころに別れた友と再会したときから、わたしのなかに大きな問いが生まれました。
 住民とはなにか?
 彼女はわたしと同じまちで生まれ、共に笑い、共に泣き、共に遊んだ友でした。30年後、彼女は「わたし指紋押捺を拒否する決心をしたの。みいちゃん、わたしといっしょにきてほしい」と在日コリアンとして本名をなのり、わたしの目の前に立っていました。
 住民とは、「自由な意志を持ち、地域社会でくらすすべてのひとびと」です。外国人も、おとしよりも、子どもも、障がい者も、「住民はひとしく行政サービスを受け、その負担を分担する」と法律に定められています。でも外国人には住民自治の基本の権利である「参政権」はありません。その他の義務はひとしく住民として負っているのに、です。
 参政権とは、諸権利のなかの権利、自分の運命を自分で決める権利のことです。その地域社会に日々くらしている、すべてのひとびとが、自分の運命を自分の意思で決めることができる-それが住民自治ではないでしょうか。

《法条文》
・憲法93条② 「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏
員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」
・〔住民の意義及び権利義務〕 地方自治法第10条
・〔住民の選挙権〕 地方自治法第11条

・《外国人の地方選挙権》 「最高裁(最判平7,2,28)は、憲法93条2項の住民は日本国民をいうと説きつつ、地方公共団体と特段に密接な関係を持つ永住者等に選挙権を付与することは憲法上禁止されていないと判示した。なお、憲法93条2項が「国民」ではなく「住民」と規定していることは、許容説を強化する根拠にもなる。」『法律キーワード事典』P38より。
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『市民派議員になるための本』
(寺町みどり著/上野千鶴子プロデュース/学陽書房)1‐2 「市民」とはだれか?

 あなたは、市民ですか? 住民ですか? どう呼ばれたいですか。
 「市民」というと、主体的な意思を持つ住民、という意味のように聞こえます。法律には、市民という言葉は出てきません。「住民自治」「住民監査請求」「住民及び滞在者」「住民の意義」すべて住民と書いてあります。
 「自治」が住民自治であることを考えれば、「市民」は「わたしのことは、わたしが決める」ひとびとのすべてをいうはずです。
 自治体の当事者はすべてのわたし。
 この本では「わたしのことは、わたしが決めたい」すべてのひとびとを、「市民」と呼ぶことにします。

《参考文献》
『超入門 地方自治制度はこうなっている』今井照著・学陽書房
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今日からいよいよ本文です。
まずは、第一部の「自治」編です。

1節ずつの文章は短いのですが、基本のき、いわゆる「理論」編にあたる部分です。
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『市民派議員になるための本・・・・立候補から再選まで・・・』
(寺町みどり著/プロデュース・上野千鶴子/ 発行 学陽書房)
第一部 自治
第1章 自治とは・・・

1-1 自治とはなにか?

 まずはじめに、基本のキからおさえておきましょう。でないとなんのために「政治」にかかわるのか、とりちがえることになりかねません。
 自治ってなに? 自治体ってなに? 政治ってなに? 意外とみなさん知らないものです。あなたもきっと、ヘェーって思うことでしょう。
 「自治」とは、「みずからの自由意志に基づき、自由に行為を行うこと」です。
 「自治体」とは、ものごとを決めるシステムのある地域社会のこと、そこで日々くらすひとびとの集団です。「役所は自治体の事務所」と法律に書いてあります。「みずから」とは、あなたのことであり、わたしのことです。
 当事者はわたし。
 「わたしのまちのことは、わたしが決める」。目からウロコ、でした。

《法条文》
・憲法第92条「地方公共団体の組織および運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、これを定める。」
・〔この法律の目的〕 地方自治法第1条
・〔地方公共団体の事務所の設置又は変更〕 地方自治法第4条
《参考》
「地方自治の本旨」とは→地方自治の本旨とはなにか明文された規定はないが、「国から独立した地方公共団体がその判断と責任で行う団体自治と、その事務の処理や事業の実施を住民の意思に基づいて行う住民自治の二つの要素がともに満たされることが必要である。団体自治は地方分権の原理を示し、住民自治は民主主義の精神をあらわすものと考えられるが、一般的には住民自治が地方自治の本質的要素であり、団体自治はその法制的要素である。(『議員必携』より)」といわれている。
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『市民派議員になるための本』は、2001年12月に、たった25日で書き下ろした本です。この本のプロデューサーは上野千鶴子さんです。
ど素人のわたしは、本を書くイロハを上野さんから学びました。
この本は、今読み返してもとてもよい本だと思うのですが、わたしが本を書けたのは、師匠がよかったからだと今でも思っています。
この本を書いた理由はふたつあります。
ひとつは、上野さんのため、もう一つは、まだ見ぬ読者のためです。
いま、この本の内容を連載するのは、ひとりで多くの人に立候補を決意してほしいから。
立候補がなければ、当選もありません。
選挙や政治がどういうものか分かれば、「私も議員になってみよう」という人が増えます。
本のメッセージは、「おわりに」こんな言葉で結んであります。

 わたしには、あなたに切実に伝えたいメッセージがあります。
 あなたが、本を読みながらこのわたしの経験を共有し、わたしからのメッセージを受けとり、読みおわって「わたしも市民派議員になりたい」と思っていらっしゃるなら、とてもうれしい。
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『市民派議員になるための本・・・・立候補から再選まで・・・』(寺町みどり著/プロデュース・上野千鶴子/ 発行 学陽書房)
 おわりに -

 『市民派議員になるための本』はラディカルな実用書です。
 わたしはこの本を、「読むだけの本」ではなく、現場で「使いたおしてもらうための本」として書きました。
 わたしが議員のとき、現場でつかえる本はほとんどありませんでした。議会はオドロキの連続で、わたしはなにかにつまづくたびに、『議員必携』や『自治六法』(ぎょうせい)をたよりに、行政実例や判例を調べ、法の解釈や運用を自治省(現総務省)や県地方課(現市町村課)に聞き、議会の内外で議論しました。
 まわりを見まわしても、この分野でさきを歩く人はいなくて、わたしは議会で多数派を相手に孤独なたたかいを強いられました。そんなわたしを支えてくれたのは、仲間やまちの女たちでした。
 この市民派議員をとりまく状況は、現在でも変わっていません。むしろここ数年、逆風は強くなり、わたしのまわりでも市民派議員へのイヤガラセや理不尽な懲罰事件がふえています。かくじつにチカラをつけ議会のなかでたかう市民派議員の存在が、多数派議員の足元の既得権をおびやかしているからです。
 ’99統一自治体選挙で、女性議員の数はたしかにふえましたが、議会で市民派議員としてはたらくのはカンタンなことではありません。多数派議員からの圧力やセクハラにあい、たたかうことをあきらめる市民派女性議員もすくなくないのです。
 だから、議会でなにが起きるかを知り、数の力に対抗するノウハウとスキルを身につけることは、市民派議員になるために必要なことです。わたしは、自分の経験とノウハウをあとにつづく女たちに伝えたいと思い、カオの見える関係のなかで、勉強会を続けてきました。

 昨年の夏、ひょんなことからわが家にあらわれて、「本を世に出しましょう」と言い出したのは、上野千鶴子さん。「書けません」と抵抗するわたしを、なだめたりスカシたり、とうとう自発的に本を書かせてしまったスゴ腕のプロデューサーです。
 11月、上野さんと7時間半かけて、自宅で5部構成約170項目の構成案をつくりました。わたしの書きたいことと上野さんのリクエストがかさなり、できあがった本の全体像を見て、よい本になると直観しました。
 「この手の本はテマがかかる」「発刊まで一年」と編集者の星野さんにお聞きし、マサカと思っていましたが、12月にわたしが初稿を書き下ろし、以来なんども3人のあいだを原稿が行き来しました。上野さんがこの本にかけた時間はボーダイなものでした。
 5月、確定原稿の打ちあわせのあと、地下鉄のなかで、上野さんに聞きました。
 「わたしの本のお仕事はアンペイドワーク(不払い労働)ですね?」
 上野さんは答えました。「いいえ。道楽です。」

 理論が経験を説明するものなら、理論を現場で具現化し実証することもできるハズです。この本は上野さんの著書から学んだ理論を現場でカタチにしたものだ、とわたしは思っています。制度のなかにはいって現場でたたかうには、その制度としくみを知ることが不可欠です。そのためには理論と言葉が必要です。
 現場と理論が乖離(かいり)しているとわたしは思いません。

 一年前、上野さんに「無党派・市民派とはなにか、わたしにわかるように伝えてください」と問われましたが、コトバにできませんでした。その答をわたしはこの本で書きました。
 わたしは本を書きながら、ドンドン景色が変わるという経験をしました。全体が見わたせるようになると、欠けているピースを自分でつくって入れました。できあがった絵は、わたしにとって思いがけないものでした。わたしはいま、あらたな地平に立っています。 
 わたしには、あなたに切実に伝えたいメッセージがあります。
 あなたが、本を読みながらこのわたしの経験を共有し、わたしからのメッセージを受けとり、読みおわって「わたしも市民派議員になりたい」と思っていらっしゃるなら、とてもうれしい。
 
 わたしが原稿を書くことに集中できる環境をさりげなくつくり、はんざつな資料の作成を手伝ってくれたパートナーのともちゃん、ほんとうにありがとう。
 学陽書房の名編集者、星野智恵子さんは、初心者のわたしの仕事を支えはげましてくださいました。交わしたメールはマクラになるほど。いまではわたしの大切なおともだちです。こころから感謝しています。
 そして、わたしを見つけ、わたしと組んで本をつくろうと言ってくださった上野さん。プロデューサー兼編集者として、はじめからおわりまで、わたしをあたたかく見まもり、原稿を読んで的確なコメントを出し、ていねいなコミュニケーションをしてくださいました。
 「同行二人」、わたしはあなたの存在にはげまされて本を書くことができました。
 この本のさいしょの一冊を、上野千鶴子さんに贈ります。

 --わたしが出会い別れたすべての人に、そしてこれから出会うあなたに、ありがとう。
                2002年 1年後の夏の日に 
                                          みどり
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