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「ジェンダーフリーをめぐって」上野千鶴子(信濃毎日新聞・熊本日日新聞1/23付記事)

速報です。

今回の「東京都が上野さんの講師選定を拒否した」事件について、
上野千鶴子さんの原稿が、昨日の、
信濃毎日新聞と熊本日日新聞の1月23日付
連載コラム「月曜評論」に掲載されました。

昨日アップした「東京都に抗議署名を!」の署名も、
全国のこころある方たちから、ぞくぞくと集まってて、
1500人は越えているようです。

このURLは転載・転送自由で、
あちこちのブログでとりあげられています。

署名の締め切りは、明日1月26日正午。
まだ間に合います。


あなたもぜひ、上野さんの記事を読んで
署名に参加してください。

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ジェンダー・フリーをめぐって 
         上野千鶴子

 東京都知事とけんかを始めた。
 正確にいうと、売られたけんかを買っただけで、こちらから売ったわけではない。毎日新聞 (2006年1月10日付け)に「ジェンダー・フリー問題:都『女性学の権威』、上野千鶴子さんの講演を拒否/用語など使うかも…『見解合わない』理由に拒否--国分寺市委託」の記事が掲載されたので、知っている人もいるかもしれない。
 主催側の市民団体の方たちから、都の委託事業で国分寺市が主催する人権講座に、「当事者主権」のテーマで講演してほしいという依頼を受け、それが都の介入によって取り消しになった経過説明を受けていた。だが、都の説明文書があるわけではなく、もっぱら伝聞情報ばかりなので、反論のしようがない。毎日新聞の記者が、都の東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長に取材して、発言を記事にしてくれた。それでようやく言質がとれた。
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 それによれば「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」とある。私は女性学の権威」と呼ばれることは歓迎しないが、女性学の研究者ではある。都の見解では、「女性学研究者」すなわち「ジェンダー・フリー」の使用者、という解釈が成り立つ。わたしに依頼のあった講座は、人権講座で、タイトルにも内容にも「ジェンダー・フリー」は使われていないのに、「可能性がある」だけで判断するのだから、おそれいる。世の中には、「ジェンダー学」を名のる研究者も多く、それらの人々はましてや「ジェンダー・フリー」を使う可能性が高い。そうなると、女性学・ジェンダー研究の関係者は、すべて東京都の社会教育事業から排除されることになる。
 わたしは石原都政以前には都の社会教育事業に協力してきた実績があるし、現在でも他の自治体からは教育委員会や男女共同参画事業の講演者に招聘されているのだから、都にとってだけ、とくべつの「危険人物」ということなのだろうか?
 看過するわけにいかないので、公開質問状を、石原慎太郎東京都知事、東京都教育委員会、国分寺市、国分寺市教育委員会等に1月13日付けの内容証明郵便で送った。意思決定のプロセスを明らかにし、責任が誰にあるのかを問うことと、上野が講師として不適切であるとの判断の根拠を示すように求めたものである。回答の〆切は1月末日。
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 こういうやりとり、おそらく石原知事は「余は関知せず」というだろう。都庁の役人が、都知事の意向を忖度(そくたん)してやったことと思うが、この時期に都の生涯学習スポーツ部社会教育課長という職にたまたま就いていた人物は、自分がどんな地雷を踏んだかに気がついていないだろう。この役人も、おそらく石原都政前には別な判断をしていただろうし、石原政権が交替すればまたまた変身するかもしれない。すまじきものは宮仕え。ご苦労さんとは思うが、ことは上野個人の処遇に関わらない。ゆきすぎた「ジェンダーフリー・バッシング」には徹底的に反論しなくてはならない。
 公開質問状は主要メディアにも同時に送付した。現在までのところ、毎日とNHKは報道、朝日と時事通信からは取材、日本外国特派員協会からもコンタクトがあった。本欄の読者の方たちは、これで初めて知ることになるだろうか。今後の帰趨(きすう)を見守ってもらいたい。
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(信濃毎日新聞・熊本日日新聞2006/1/23付「月曜評論」記事より)



「東京都に抗議!」の署名はここから。
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